どうもマツザキのオンラインショップ、ホームページ担当の今野です。
この度はイチローズモルトを蒸留している、秩父にあるベンチャーウィスキー秩父蒸留所へ見学をしにお邪魔してきました。
上の写真の壁と下の写真の壁の色が違うのは、アルコールを食べる黒麹が着いているか否かの違いだそうです。つまりアルコールの発生している建物は黒く、発生していない建物は白いのだとか。黒い建物は良いウイスキーを蒸留している証なのだそうです。
そもそもベンチャーウィスキーは、肥土伊知郎(あくといちろう)氏が2004年に設立し、2008年にウィスキーの製造を開始した、今年でまだ発売を開始して10年目となる若い蒸留所です。
伊知郎氏はサントリーで約6年間を営業で勉強した後、21代目として継いだ家業は、焼酎やウイスキーにまで手を広げていました。しかし、2004年、業績不振で他社の手に。譲渡先が興味を示さなかった400樽のウイスキーの原酒だけが残されました。
迷った中、同年にて資本金1千万円で「ベンチャーウイスキー」を立ち上げ、「子ども」を世に出してあげたかったと伊知郎氏は語ります。初めは2年間で600本しか売れず、「資本金を飲み尽くしたら事業から撤退しよう」と考えていました。
しかし、確実に水割りやハイボールだけでなく、一つの蒸留所の原酒だけを使う「シングルモルト」をストレートやロックで楽しむ層が、確実にすそ野を広げているという手応えをつかんでいました。
「たくさんの人が満足する平均的な酒より、原酒の個性を大切にしたい」新たな原酒造りへの思いが膨らみ、07年には先祖が酒造りを始めた地に、ウイスキーの蒸留所を完成させました。
年々とウイスキーの評価は上がっていき、2012年2月にはジャパニーズ・ウィスキー・オブ・ザ・イヤーを獲得されました。またイギリスの『ウイスキーマガジン』のジャパニーズモルト特集では最高得点の「ゴールドアワード」に選ばれました。
そして昨年、WWA2017(ワールド・ウイスキー・アワード2017)の「シングルカスクシングルモルト」部門で出品した「イチローズモルト秩父ウイスキー祭2017」が世界最高賞を受賞いたしました。つまり世界一に選ばれたのです。創立してから僅か10年ほどでの世界一はまさに前代未聞で、世界的なニュースとして話題となりました。上の写真はトロフィーと受賞したウイスキーです。
さて、前置きが長くなりましたが早速見学スタートです。本日は蒸留所で働く田畑さんに案内をしてもらいました。様々なものに例えながら具体的に説明してくれて、ユーモアセンスも溢れながら楽しく蒸留所を案内してくれました。
蒸留所は製麦から、発酵、蒸留までを一つの施設内で行っております。(貯蔵や麦芽の乾燥は別の建物です)他の蒸留所と比べるとかなりコンパクトで、世界一小さな蒸留所とも呼ばれています。
仕込み最中のもろみは麦の香ばしい香りがいっぱい、蒸留前のアルコール度数はだいたい7%程度だそうです。発酵特有の甘い香りは、ガスが充満しているので嗅ぎすぎるとクラっ……とする事も。
ウイスキー蒸留所ならではのポットスチルはスコットランドの職人お手製のものです。ウイスキーを作る蒸留器の企画では一番小さなサイズみたいです。
蒸留の熱による化学反応で様々なフレーヴァーが生まれます。大きいポットスチルだとスッキリとした軽やかな仕上がりに、小さなポットスチルだとフルボディでリッチなタイプに仕上がるそうです。もちろんどちらにも良さがあるので、どういうポットスチルにするかで、蒸留所の個性が分かるそうです。
また蒸留器は消耗品、使用して行く度に銅の熱さが薄くなっていくので、数年に一回ペースで新しいものにするそうです。現にベンチャーウイスキー入口には、以前使用していたポットスチルが飾ってあります。
そして次に向かうは貯蔵庫です。ミズナラやバーボンど、様々な素材の樽に貯蔵されたウイスキーが静かに眠っています。
ベンチャーウイスキーでは毎年樽材になるミズナラの木を探しに、北海道の競売に参加してくるそうです。伊知郎氏は蒸留所近くで大麦栽培も始め、自ら畑に立ちます。10年、20年ものもあるウイスキーづくりには時間がかかる。樽材になる木が育つまで100年から200年。蒸留作業にかかる1週間の後は、樽の中の熟成をじっと待つだけ。人間は関われない。自然の恵みをいただいているんだなと痛感します。自然への敬意、畏怖の念を感じていると語っています。
進んでいくと目立った形の樽が……これは、イチローズモルトのシリーズでも人気の高いワインウッドリザーブの樽です。台座は五角形、卵型の樽は目を引きました。話を聞くとどうやら西洋風水に基づいた造りらしく、月の満ち欠けによる滞留が品質により良く影響を与える様にとの考えらしいです。
樽のサイズにより、木に接する面積が違うので、どのようなサイズの樽に入っているかも重要なポイントです。そういえば過去にイチローズモルトちび樽という商品も発売していましたね。
貯蔵庫は入った途端にウイスキーと樽の芳醇な香りが漂っており、思わずうっとりとしてしまいました。しかし夏になるとさらに豊かな香りが貯蔵庫に充満するようです。樽の置き場所、高さなどによって貯蔵の仕方が変わるらしく、樽の移動で半日以上を費やす事もあるそうです。
さて、一通り見学させて頂いたあとはテイスティングのお勉強です。マツザキでも通年通して取り扱っているホワイト、緑葉、赤葉、金葉の他、今現在貯蔵しているウイスキー、秩父産ウイスキーのオンザウェイ、そしてIPAビールに使用した樽を使ったIPAカスクフィニッシュなど、それぞれの香り、色、飲み方と勉強させて頂きました。スタッフの方々も常に笑顔で気さくに挨拶してくださり、少人数での製造らしいですが、会社全体には暖かい空気を感じました。
ベンチャーウイスキーは市内での大麦栽培や樽の材料となるミズナラの入手など、今後は純秩父原産ウイスキー造りに挑んでいくそうです。
同じ地元に根付く企業としてマツザキは今後もベンチャーウイスキーを応援してまいります!
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