改めましての勝沼醸造

改めて勝沼醸造をご紹介する前に、皆さん国産ワインというと、どの様なイメージを持たれるでしょうか?

高いけれど薄い味わい、瑞々しく甘い呑み口、海外からブドウ果汁を仕入れている。

確かにそのような印象を受けるワインもありますが、ここ10年でそのイメージは変わってきています。

そんな過去のイメージを払しょくさせた立役者と言って良いのが勝沼醸造です。

それは今までの日本人が思う国産ワインの酒質を覆すという事でした。

そもそも日本の酒税法に「ワイン」というものはありません、全て「果実酒」となります。

2018年10月までは、海外からブドウ果汁を輸入してワインを作っても「日本ワイン」と名乗れました。現在も国産のブドウでワインを造っても、海外のブドウで造っても酒税法上では「果実酒」です。果実酒のくくりの中で「日本ワイン」という規定なのです。

これは海外に向けてアプローチする際に非常に大変です。何せ、海外の方がワインを輸入しようとしても表記は果実酒です。ワインがほとんどですがリンゴや桃でお酒を造っても果実酒という扱いになります。

食用ブドウがメインであった日本で、ワイン用のブドウを造ると言う事は容易ではありませんでした。勝沼醸造は1937年(昭和12年)に設立してから、農家を説得して一樽でも良いものを造ると言う信念を持ちワインを造り続けました。それは世界のワイン業界の中で日本のワインを認めさせるというチャレンジでした。

様々な品種、仕立て方、醸造方法を得てたどり着いたのが「甲州」という品種でした。日本のテロワール(土壌)に合い、ワイン造りに向いた品種として、白は甲州ワイン一本化にしました。飲まれた方から「甲州っぽくないね」と言われる事もありましたが、それは“瑞々しい”、“軽くて甘い”、“薄い味わい”ではなく、より白ワインらしい辛口のボリュームのある味わいだったからです。地元を中心に少しずつイメージは変わっていきます。

転換期は2003年4月でした。フランスの国際ワインコンテスト「第9回ヴィナリーインターナショナル」で銀賞を受賞しました。甲州ワインが難易度の高いコンテストにて受賞すると言うのはもちろん初。甲州ワインでも取り組み次第で高付加価値のものを造れると話題になりました。

それからも勝沼醸造の酒質は向上し続けています。現在は年間40万本、全体の4分の3が白ワインで甲州品種。10年前よりも確実にワインは美味しくなっており、甲州の魅力が引き出されています。マツザキでも年々進化する味わいは試飲する度に驚いています。

インターナショナルワインチャレンジでは毎年の如く受賞しており、JAL国際線には甲州ワインとして「アルガブランカ」初搭載、甲州ワインのEU輸出開始と着実に日本ワインは勝沼醸造を通して世界で認知されてきています。

ブドウ栽培も様々なテロワールで仕立て方を試してみたり、設備投資(プレス機やステンレスタンクなど)、醸造方法のクオリティを上げ、より質の良いブドウで、酸化を防ぎ、酒質を向上させ、甲州品種の未来に繋げています。

世界では「ワイン造り=農業」が基本ですが、日本では食用ブドウがメインだった事から「ワイン造り=加工品」という考え方がありました。しかし、儲ける事よりもワイン文化を広める、日本のワインが世界で認められるように、勝沼醸造の考え方は他のワイナリーや農家にも伝わり、全体的なクオリティの底上げがされました。

その事が良いイメージの無かった国産ワインの印象を少しずつ払しょくさせ、本格的な世界に向けた日本のワイン産業へのきっかけとなったのです。

それでは、勝沼醸造のワインが何故ここまで人気になったのか?

それは今までワインというと洋食、赤だとステーキ、白だと魚料理というイメージでしたが、国内の土壌で育ったブドウで造った本格的な国産ワインは出汁を使った和食料理と相性が良く、割烹料理屋、和食料理店、寿司屋などで勝沼醸造のワインは良いマリアージュだとして好まれて使用されています。

アルガブランカ イセハラはつぶ貝やエビ料理、アルガブランカ ピッパは燻製料理や魚の粕焼き、アルガーノ ゴッタシデロシオは出汁巻き卵や、肉じゃがなどと相性が良く、海外のパワフルなワインよりも、繊細で柔らかでありながらブドウの風味がしっかりと感じられる勝沼醸造のワインはまさに日本の技術が詰まったワインなのです。